1第三款 キリストによりて再生したる人の福なる状態 2其は生命を與ふる霊の法は、キリスト、イエズスに於て罪と死との法より我を救ひたればなり。 3夫肉を以て弱れるが故に、律法は為す能はざりしを、神は罪の肉の如き状を以て御子を罪の為に遣はし給ひ、其肉に於て罪を處分し給へり。 4是肉に從はず霊に從ひて歩める我等に於て、律法の禁令の全うせられんが為なり。 5肉に從ふ人々は肉の事を好み、霊に從ふ人々は霊の事を好む。 6肉の好は死[と]なり、霊の好は生命及び平安[と]なる。 7其は肉の好みは神に敵對して神の律法に服せず、又服する能はざればなり。 8然れば肉に居る人々は、神の御意に適ふ能はず。 9然て神の霊若汝等に宿り給はば、汝等は肉に居らずして霊に居るなり。人若キリストの霊を有せずば、キリストのものに非ず。 10若キリスト汝等に在さば、肉體は罪の為に死したるものなれども、霊は義とせられたる為に活く。 11若イエズスを死者の中より復活せしめ給ひし者の霊汝等に宿り給はば、其死よりイエズス、キリストを復活せしめ給ひし者は、汝等に宿り給へる其霊によりて、汝等の死ぬべき肉體をも活かし給はん。 12然れば兄弟等よ、我等は肉に對して、肉に從ひて活くべき負債ある者に非ず、 13蓋汝等若肉に從ひて活きなば死すべく、霊を以て肉の業を殺さば却て活くべし。 14其は何人によらず、神の霊に導かるる人は神の子たればなり。 15蓋汝等の受けしは、更に懼を懐く奴隷たるの霊に非ず、子とせらるる霊を受けしなり。我等がアバ即ち父と呼ぶは是が為なり。 16蓋[聖]霊自ら我等の精神と共に、我等が神の子たるを證し給ふ。 17既に子たれば又世嗣たり、即ち神の世嗣にして、キリストと共同の世嗣たるなり。是我等もし共に苦しまば、光榮も亦共に受くべき為なり。 18我想ふに現世の苦は、我等が身の上に顕るべき将來の光榮に及ぶものに非ず、 19蓋被造物の仰ぎて待てるは、神の子等の顕れん事を待てるなり。 20被造物は虚に服せしめられたるも之を好まず、己を希望を以て服せしめ給ひしものに對して然するのみ。 21其は被造物も自ら腐敗の奴隷たる事を脱れて、神の子等の光榮の自由を得べければなり。 22即ち我等は知る、被造物は皆今に至るまで相共に嘆き、且陣痛に遇へるなりと。 23啻に被造物のみならず、聖霊の最初の賜を得たる我等も、自ら心の中に嘆き、神の子等とせられて肉體の贖はれん事を仰ぎ待てるなり。 24蓋我等の救はれたるは猶希望に止る、見ゆる希望は希望に非ず、既に見る所は人何ぞ之を希望せん。 25見ざる所を希望するに當りては、我等は忍耐を以て之を待つ。 26斯の如く、聖霊も亦我等の弱を援け給ふ。蓋我等何を祈るべきかを知らざれども、[聖]霊御自言ふべからざる歎を以て、我等の為に求め給ふ。 27斯て、心を見透し給ふものは[聖]霊の望み給へる所を知り給ふ。其は神の御旨に從ひて、聖徒の為に求め給へばなり。 28我等は知れり、神を愛する者即ち規定に應じて聖徒と召されたる人々には、萬事共に働きて其為に益あらざるはなし、と。 29蓋神は豫知し給へる人々を、御子の状に肖似らしめんと豫定し給へり、是御子が多くの兄弟の中に長子たらん為なり。 30斯て豫定し給ひし人には亦之を召し、召し給ひし人は亦之を義とならしめ、義とならしめ給ひし人には、亦賜ふに光榮を以てし給ひしなり。 31是等の事に加へて我等又何をか言はん、神もし我等の為にし給はば、誰か我等に敵對する者ぞ、 32我御子をすら惜み給はず、却て我等一同の為に之を付し給ひたれば、争でか之に添へて、一切を我等に賜はざらんや。 33神に選まれたる人々を訟ふる者は誰ぞ、其は義とならしめ給ふ神ならんか。 34是等を罪に處する者は誰ぞ、其は死して而も復活し、神の右に在して尚我等の為に執成し給ふキリスト、イエズスならんか。 35然ればキリストに對する愛より、我等を引離す者は誰ぞ、是苦難ならんか、憂か、飢か、裸體か、危険か、迫害か、剣か、 36録して「我等終日主の為に死の危険に遇ひ、屠らるべき羊の如くせらるるなり」とあるが如し。 37然れど我等此凡ての事の中に在りて、我等を愛し給へる者により、勝ちて尚餘あり。 38蓋我は確信す、死も、生も、天使も、権勢も、能力も、現在の事も、未來の事も、(力も)、 39高さも深さも、他の如何なる被造物も、我主イエズス、キリストに於る神の寵より、我等を離し得るものなし、と。 ¶