1人に見られんとて人の前に汝等の義を為さざる様慎め。然らずば天に在す汝等の父の御前に報を得じ。 2然れば施を為すに當りて、僞善者が人に尊ばれんとて會堂及衢に為す如く、己が前に喇叭を吹くこと勿れ。我誠に汝等に告ぐ、彼等は既に其報を受けたり。 3汝が施を為すに當りて、右の手の為す所、左の手之を知るべからず。 4是汝の施の隠れん為なり。然らば隠れたるに見給ふ汝の父は汝に報い給ふべし。 5又祈る時僞善者の如く為ること勿れ。彼等は人に見られんとて會堂に衢の隅に立ちて祈る事を好む。我誠に汝等に告ぐ、彼等は既に其報を受けたり。 6汝は祈るに己が室に入りて戸を閉ぢ、隠れたるに在りて汝の父に祈れ、然らば隠れたるに見給ふ汝の父は汝に報い給ふべし。 7又祈るに異邦人の如く繰言を為すこと勿れ、彼等は言の多きに由りて聴容れられんと思ふなり。 8故に彼等に倣ふこと勿れ、其は汝等の父は、汝等の願はざる前に其要する所を知り給へばなり。 9然れば汝等斯く祈るべし。天に在す我等の父よ、願はくは御名の聖と為られん事を、 10御國の來らん事を、御旨の天に行はるる如く地にも行はれん事を。 11我等の日用の糧を今日我等に與へ給へ。 12我等が己に負債ある人を赦す如く、我等の負債をも赦し給へ。 13我等を試に引き給ふことなく、却て惡より救ひ給へ、(アメン)と。 14蓋汝等若人の罪を赦さば、汝等の天父も汝等の罪を赦し給ふべく、 15汝等若人を赦さずば、汝等の父も汝等の罪を赦し給はざるべし。 16汝等断食する時、僞善者の如く悲しき容を為すこと勿れ。即彼等は、断食する者と人に見えん為に其顔色を損ふなり。我誠に汝等に告ぐ、彼等は既に其報を受けたり。 17汝は断食する時、頭に膏を附け且顔を洗へ、 18是断食する者と人に見えずして、隠れたるに在す汝の父に見えん為なり、然らば隠れたるに見給ふ汝の父は汝に報い給ふべし。 19汝等己の為に寳を地に蓄ふること勿れ、此處には錆と蠹と喰ひ壊り、盗人穿ちて盗むなり。 20汝等己の為に寳を天に蓄へよ、彼處には錆も蠹も壊らず、盗人穿たず盗まざるなり。 21其は汝の寳の在る處に心も亦在ればなり。 22汝の身の燈は目なり。若し汝の目清くば全身明にならん、 23汝の目惡くば全身暗からん。然れば汝の身に在る光すら暗黒ならば、暗黒其物は如何あるべきぞ。 24誰も二人の主に兼事ふる事能はず、其は或は一人を憎みて一人を愛し、或は一人に從ひて一人を疎むべければなり。汝等は神と富とに兼事ふる事能はず、 25故に我汝等に告ぐ、生命の為に何を食ひ、身の為に何を着んかと思煩ふ勿れ、生命は食物に優り、身は衣服に優るに非ずや。 26空の鳥を見よ、彼等は撒く事なく、刈る事なく、倉に収むる事なきに、汝等の天父は之を養ひ給ふ、汝等は是よりも遥に優れるに非ずや。 27汝等の中誰か、思煩ひて其生命に一肘だも加ふる事を得る。 28又何とて衣服の為に思煩ふや、野の百合の如何にして育つかを看よ、働く事なく紡ぐ事なし、 29然れども我汝等に告ぐ、サロモンだも、其榮華の極に於て、此百合の一ほどに装はざりき。 30今日在りて明日炉に投入れらるる野の草をさへ、神は斯く装はせ給へば、况や汝等をや、信仰薄き者よ、 31然れば汝等は、我等何を食ひ何を飲み何を着んかと云ひて思煩ふこと勿れ、 32是皆異邦人の求むる所にして、汝等の天父は、是等の物皆汝等に要あるを知り給へばなり。 33故に先神の國と其義とを求めよ、然らば是等の物皆汝等に加へらるべし。 34然れば明日の為に思煩ふこと勿れ、明日は明日自、己の為に思煩はん、其日は其日の勞苦にて足れり。 ¶