1第四項 イエズスエルザレムへの最後の旅行 2群衆夥しく之に從ひければ、其處にて彼等を醫し給へり。 3ファリザイ人近づきて、彼を試みて云ひけるは、如何なる理由の下にも、人は其妻を出すを得べきか。 4イエズス答へて曰ひけるは、汝等読まざりしか、即元始に人を造り給ひしもの、之を男女に造りて曰はく、 5「此故に、人は父母を離れて、其妻に就き兩人一體と成るべし」と、 6然れば既に二人に非ずして一體なり、故に神の配せ給ひしもの、人之を分つべからず、と。 7ファリザイ人云ひけるは、然らば離縁状を與へて妻を出すべし、とモイゼの命ぜしは何ぞや。 8答へて曰ひけるは、モイゼは汝等の心の頑固なるが為に、妻を出す事を汝等に許したれど、元始より然はあらざりき。 9即我汝等に告ぐ、総て私通の故ならで其妻を出し、他の女を娶る人は姦淫するなり、又出されたる女を娶る人も姦淫するなり、と。 10弟子等イエズスに向ひ、若人の妻に於る事斯の如くば、娶らざるに若ず、と云ひしかば、 11イエズス曰ひけるは、人皆此言を肯容るるには非ず、[肯容るるは]賜はりたる者のみ。 12即母の胎内より生れながらの閹者あり、人より為られたる閹者あり、又天國の為に自ら作せる閹者あるなり。肯容るるを得る人は肯容るべし、と。 13時に按手して祈られんが為、孩兒等イエズスに差出されしが、弟子等之を拒みければ、 14イエズス彼等に曰ひけるは、孩兒等を容せ、其我に來るを禁ずること勿れ、天國は斯の如き人の為なればなり、と。 15斯て彼等に按手し給ひ、さて此處を去り給へり。 16折しも一人[の青年]イエズスに近づきて云ひけるは、善き師よ、我永遠の生命を得んには、如何なる善き事をか為すべき。 17イエズス曰ひけるは、何ぞ善を我に問ふや、善き者は獨のみ、即神なり。但汝若生命に入らんと欲せば掟を守れ、と。 18彼、何れ[の掟]ぞや、と云ひしにイエズス曰ひけるは、汝人を殺す勿れ、姦淫する勿れ、偸盗する勿れ、僞證する勿れ、 19汝の父母を敬へ、又汝の近き者を己の如く愛せよ、と。 20青年云ひけるは、是皆我幼年より守りし所、猶我に缼けたるは何ぞや。 21イエズス曰ひけるは、汝若完全ならんと欲せば、往きて有てる物を売り、之を貧者に施せ、然らば天に於て寳を得ん、而して來りて我に從へ、と。 22此言を聞くや青年憂ひて去れり、是多くの財産を有てる者なればなり。 23イエズス弟子等に曰ひけるは、我誠に汝等に告ぐ、富者は天國に入り難し、 24又汝等に告ぐ、駱駝が針の孔を通るは、富者の天國に入るよりも易し、と。 25弟子等聞きて甚怪しみ、然らば誰か救はるるを得ん、と云ひければ、 26イエズス彼等を凝視めつつ曰ひけるは、是人に於ては能はざる所なれども、神に於ては何事も能はざる所なし、と。 27其時ペトロ答へて云ひけるは、然て我等は一切を棄てて汝に從へり、然れば何を得べきぞ、と。 28イエズス彼等に曰ひけるは、我誠に汝等に告ぐ、我に從ひたる汝等は、世革りて人の子其光榮の座に坐せん時、汝等も十二の座に坐して、イスラエルの十二族を審くべし。 29又総て我名の為に、或は家、或は兄弟、或は姉妹、或は父、或は母、或は妻、或は子等、或は田畑を離るる人は百倍を受け、且永遠の生命を得べし。 30但多く、先なる人は後になり、後なる人は先にならん。 ¶