1第三項 人々イエズスに反抗し始む 2家に居給ふ事聞えしかば、人々夥しく集り來り、門口すら隙間もなき程なるに、イエズス彼等に教を宣べ居給へり。 3茲に人々、四人に舁かれたる一個の癱瘋者を齎ししが、 4群衆の為に之をイエズスに差出だすこと能はざれば、居給ふ處の屋根を剥ぎて之を開き、癱瘋者の臥せる床を吊下せり。 5イエズス彼等の信仰を観て、癱瘋者に向ひ、子よ、汝の罪赦さる、と曰ひしかば、 6或律法學士等其處に坐し居て、心に思ひけるは、 7彼何ぞ斯の如く云ふや、是冒涜するなり、神獨の外、誰か罪を赦すことを得んや、と。 8イエズス彼等の斯く思へるを直に其心に知りて曰ひけるは、何為ぞ然る思ひを心に懐ける。 9癱瘋者に汝の罪赦さると云ふと、起きて床を取りて歩めと云ふと、孰か易き。 10然て汝等をして、人の子地に於て罪を赦すの権あることを知らしめん、とて癱瘋者に向ひ、 11我汝に命ず、起きよ、床を取りて己が家に往け、と曰ひしに、 12彼忽ち起きて床を取り、衆人見る目前を過行きしかば、皆感嘆に堪へず、神に光榮を歸し、我等曾て斯の如き事を見ざりき、と云ふに至れり。 13イエズス又湖辺に出で給ひしに、群衆挙りて來りければ、彼等を教へ居給ひしが、 14通りがけに、アルフェオの子レヴィが収税署に坐せるを見て、我に從へ、と曰ひしかば、彼起ちて從へり。 15斯て彼の家にて食に就き給ひければ、多くの税吏と罪人とは、イエズス及其弟子等と共に列席したり、蓋イエズスに從へる者既に多かりき。 16律法學士ファリザイ人等、イエズスが税吏及罪人と共に食し給ふを見て、其弟子等に曰ひけるは、汝等の師は何故税吏罪人と共に飲食するぞ、と。 17イエズス之を聞きて彼等に曰ひけるは、壮健なる者は醫者を要せず、病ある者こそ[之を要するなれ]、即我が來りしは義人を召ぶ為に非ずして、罪人を[召ぶ為なり]、と。 18ヨハネの弟子等とファリザイ人とは断食したりければ、來りてイエズスに云ひけるは、ヨハネとファリザイ人との弟子は断食するに、汝の弟子は何故に断食せざるぞ、と。 19イエズス彼等に曰ひけるは、新郎の己等と共に在る間、介添争でか断食することを得ん。新郎の共に在る間は彼等断食することを得ず。 20然れど新郎の彼等の中より取去らるる日來らん、其日には断食せん。 21新布の片を古き衣服に補ぐ人はあらず、然せば其新しき補は却て古き物を引裂きて、破綻は大いなるべし。 22又新しき酒を古き皮嚢に盛る人はあらず、若然せば酒は皮嚢を裂きて流れ、皮嚢も亦廃らん、新しき酒は新しき皮嚢にこそ盛るべけれ、と。 23主又、安息日に當りて、麦畑を過り給へるに、弟子等歩みつつ穂を摘始めしかば、 24ファリザイ人イエズスに向ひ、看よ、彼等が安息日に為すべからざる事を為せるは何ぞや、と云ひければ、 25イエズス曰ひけるは、ダヴィドが急に迫りて、己も伴へる人々飢ゑし時に為しし事を、汝等読まざりしか、 26即如何にして、大司祭アビアタルの時、神に家に入りて、司祭等の外は食すべからざる供の麪を食し、伴へる人々にも與へしかを。 27又曰ひけるは、安息日は人の為に設けられて、人は安息日の為に造られず、 28然れば人の子は亦安息日の主たるなり、と。 ¶