1第三款 既往の教訓を信者の現状に應用す 2我等の信仰の指導者に在し完成者に在すイエズスに鑑みつつ、忍耐を以て我等に備はれる勝負に走るべし。即ちイエズスは曾て、己に備はれる喜に代へて、辱を厭はず、十字架を忍び給ひ、而して神の玉座の右に坐し給ふ。 3汝等倦みて己が心の弱らざらん為に、己に對する惡人のさしも甚しかりし反抗を忍び給ひし者を回想せよ。 4蓋汝等の罪に對ひて戰ふに、未だ血を流す程に抵抗せし事なし。 5汝等は又、子に於るが如くに告げらるる勧を忘れたり。曰く、「我子よ、主の懲を疎畧にすることなく、之に懲らされ奉る時倦む事勿れ、 6主は其寵み給ふ人を懲らし、総て子として受け給ふ者を鞭ち給へばなり」と。 7汝等懲を忍べ、神の汝等に對し給ふは、恰も子等に於るが如し。誰か父に懲らされざる子あらん、 8汝等若凡ての人の受くる懲の外に在らば、是私生児にして正子に非ざるべし。 9且我等は肉身の父に懲らされて、尚之を尊敬しつつありしものを、况や霊の父には歸服して生命を得べきに非ずや。 10肉身の父等は、少き日數の間に心の儘に我等を懲らしたるに、霊の父の懲らし給ふは、己が聖徳を蒙らしめて我等を益し給はん為なり。 11総て懲は其當時に在りては、喜ばしく見えず、悲しきが如くなれども、後には之を以て鍛錬せられたる人に、義の平穏なる果を結ぶものなり。 12然れば汝等、萎えたる手、弱りたる膝を立てよ、 13誰も足萎えて踏外す事なく、寧醫されん為に己の足踏を直くせよ。 14汝等凡ての人と和合し、聖徳を追求せよ、之なくては誰も主を見奉る事を得じ。 15汝等注意して、一人も恩寵より退く事なく、如何なる苦き根にもあれ、生出でて妨を為し、多くの人を汚すことなからしめ、 16一人たりとも、食物の為に長子権を売りしエザウの如く、私通者不敬者と成る事なからしめよ。 17蓋彼が、後に祝福を継がん事を望みしも退けられ、涙を以て回復を求めたれど其餘地を得ざりしは、汝等の知るべき所なり。 18汝等の近づけるは、触れ得べき山、燃ゆる火、黒雲、暗黒、暴風、 19溂叭の音、又言の聲には非ず。彼聲を聞きし人々は、言の己に語られざらん事を願へり。 20蓋獣すらも、山に触れなば石を擲たるべしと命ぜられたるを忍び得ず、 21見ゆる物甚だ恐ろしくして、モイゼも、我恐怖慄けり、と言へり。 22然るに汝等の近づきたるは、シヨンの山と、活き給へる神の都なる天のエルザレムと、億萬の天使の喜ばしき集會と、 23天に其名を記されたる長子等の教會と、萬民の審判者に在す神と、全うせられし義人等の霊と、 24新約の仲介者に在すイエズスと、アベルの血に優りて能く言ふ血の沃がるる事と是なり。 25汝等慎みて、言ひ給ふを否むこと勿れ。蓋彼等は地上に言ひ給へるを否みて迯れざりしなれば、况て天より言ひ給ふを退くる我等の迯るべけんや。 26彼時は其聲地を動かしたりしに、今は約して曰はく、「我唯に地をのみならず天をも尚一度動かさん」と。 27斯の如く「尚一度」と曰へるは、震動せざる事物の永存せん為に、震動せし事物の、造られたるものとして廃るべきを示し給ふなり。 28然れば震動せざる國を受けたるが故に、我等は感謝し奉りて、御意に適ふ様、恐れ畏みて神に事へ奉るべし。 29是我等の神は焼盡す火にて在せばなり。 ¶